日本最高峰のサービスで、アジアのハブ港に――羽田空港国際線旅客ターミナル 旅客サービスプロジェクトチーム

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首都東京の空の玄関として2010年にオープンした羽田空港国際線旅客ターミナル。開放感あふれる建物やプラネタリウムを常設した施設は、都心からすぐに行ける利便性も手伝って、東京の新たな観光スポットになりました。32年ぶりの国際便定期就航、24時間体制の行き届いたサービスと設備の充実を図るため、ユニバーサルデザインに取り組み、「コンシェルジュ」体制を敷きます。日本ならではの「最高のサービス」を掲げて、アジアのハブ空港を目指します。
オープンから現在まで、ハード面とソフト面の整備に取り組んだ東京国際空港ターミナル株式会社 旅客サービス部 部長の飯田恭久さんに話を聞きました。

一人ひとりのコンシェルジェを最高峰のレベルに

――羽田空港の国際線旅客ターミナルは、何人ものコンシェルジュの方がロビーで接客されているのが特徴の1つですが、このコンシェルジュサービス提供に至った経緯を教えてください。

国によるPFI事業「東京国際空港国際線地区旅客ターミナルビル等整備・運営事業」公募への事業提案で、コンシェルジュによる高品質なサービスを盛り込んでいました。事業者として選定され、2006年6月に東京国際空港ターミナル株式会社(TIAT)を設立、コンシェルジュの導入へ向けた具体的な検討に着手しました。

TIATの社員全員、空港ビル会社や航空会社など11社の株主会社からの出向メンバーです。それぞれの会社で持っているノウハウを出し合い、高品質なコンシェルジュサービスを実現していくか、何度も話し合ってきました。

――採用された事業提案の内容を実現に向けて取り組んだということですね。

そうですね。コンシェルジュサービスは形のないものですので、まずは「目指すサービス」について共通認識を持つところから始めました。行き着いたのは「コンシェルジュ一人ひとりが空港の品質になる」ということです。

そこで「人材育成プラン」を策定しました。目指すべき人材像の明示、サービス品質管理上の指標にするためのグレード制の導入、入社年次にとらわれず個々人の能力を持って、手を挙げた人が主体的に能力を発揮できる場を拡大するチャレンジ制の導入、責任者体制、教育・研修体制の整備などを明文化しました。

コンシェルジュ業務は業務委託の形態ですが、業務委託先のメンバーは同じ会社で仕事をしていたメンバーではありませんので、言葉の受け止め方も違います。噛み砕いた表現など、伝えることに工夫をしました。

――その次の施策は。

次に、業務委託の中で高いサービスレベルを維持するため、人員の配置計画や人員構成、組織体制、勤務体制、採用計画などを立てました。

2008年12月には、羽田空港国内線ターミナルで活躍してきたメンバーをコア要員4名として選抜しました。2009年4月に30名弱の新卒者を大量採用しました。空港での案内業務は未経験でしたので、接客業務の基本から始め、国内線ターミナルの案内所や巡回業務、電話でのインフォメーション業務で案内業務の経験を積んでもらいながら、国際線に必要な知識、拾得物取扱業務知識、4カ国語(日、英、中、韓)での接遇研修、介助サービスの研修を受けてもらいました。当初のコア要員がリーダーとなり、チームに分かれて研修を行いました。

国内線ターミナル業務経験者などからコア要員をさらに増やしました。関西国際空港や成田国際空港などでの業務を経験し、航空会社の業務基礎知識を体得し、今後の案内業務に生かすべく、経験を積んでもらったのです。

――難しかった点はありましたか?

国際線旅客ターミナルが建築中で使用できない中で、「コンシェルジュである」という自覚を持ってもらうことが難しかったです。先日まで学生だった新入社員に、社会人としての意識を持ってもらうことがスタートでした。より高い接遇サービスを提供できるプロ集団(チーム)を目指すべく、一人ひとりのモチベーションを維持するのが大変でした。実地研修やコンシェルジュの制服の検討に加わってもらい、モチベーションを盛り上げていきました。

ハードとソフトの融合で、アジアのハブ空港を目指す

羽田空港国際線ターミナルチーム

――国際線旅客ターミナルは建物全体がユニバーサルデザインであることも特徴ですね。

基本設計にかかわる部分も多いユニバーサルデザインは、早い段階から検討を始めました。幅広い関係者からの意見・提案を反映させた「参加型」のユニバーサルデザイン導入は、国からの業務要求水準の1つだったのです。2006年9月に大学の研究者や障がいのある方、航空会社や鉄道事業者などの関連事業者、国土交通省や大田区の代表からなる検討委員会を組成しました。

施工段階では、多様な障がい者を中心に有識者・設計者・施工者等のメンバーで構成した「ワークショップ」と呼ぶ評価・検証を、全部で38回行いました。検証の対象はトイレやエレベーター、エスカレーター、案内サイン、内装計画などの多岐に渡り、さまざまな障がい者の方に検証していただきました。

トイレはモックアップを製作しメーカーの方とモニターで検証したり、エレベーターは工場で検証したりしました。その中で、事業者や設計者が想定していなかったこともたくさんありました。お互いに時間をかけて意見交換をすることで相互理解が深まり、充実した取り組みや施設整備が図られたと思っています。

――ユニバーサルデザインで目指すものは?

ユニバーサルデザインで目指しているのは、施設面のハード部分と人的対応のソフト部分を融合してより高いレベルにすることです。コンシェルジュの介助サービスという人的対応もユニバーサルデザインの検討の一環でした。供用開始前には、全盲の方に講義をしていただき、実際にエスカレーター、エレベーター、階段、トイレ、パンフレットの案内も一緒に練習させていただきました。

コンシェルジュは、全員がサービス介助士の資格をもっていますが、当事者の生の声を聞いた上で知ったことも多いです。細かい部分に対しては新たなマニュアルを作成し、誰もが的確に案内、誘導できるようにしました。

国際線ターミナルが竣工した2010年8月から、コンシェルジュ一人ひとりがターミナルや駐車場をすみずみまで歩き、目で見て確認しました。お問い合わせを想定しながら、ご案内のロールプレイを重ねました。9月2日のワークショップの最終回では、ご意見をいただいた障がい者の方に模擬利用を通じて、最終チェックを行いました。

――最終チェックの評価はいかがでしたか?

コンシェルジュの歩み寄りの姿勢と手話対応には一定の評価をいただきました。一方で、点字ガイドブックを活用した案内はもう少し改善が必要となり、マニュアルを再調整しました。コンシェルジュは経験豊富なリーダークラスのメンバーでしたので、この対応を全員ができるかが大事という声もありました。当時、コンシェルジュは全部で85人に増えていたので、オープン後を見据えたチームに再構成し、グループリーダー、チームリーダーを中心に情報共有をしていきました。

コンシェルジェによる、徹底したプロの情報共有

羽田空港国際線ターミナル内のフードコート

――業務で動いている中での情報共有はどのようにしているのですか?

1~3階の各階にフロアの責任者を置き、カウンターからロビーの状況を把握し、事務所に待機している責任者に伝えます。ロビーではお客様の動線上に人を配置し、迷われていらっしゃる方に積極的にお声かけしています。案内で担当の場を離れるときには、カウンターのフロア責任者にスマートフォンで一報を入れます。

書画カメラと連動したモニターを各カウンターやテレフォンセンターに設置し、画像でも情報共有しています。交通機関の遅延などの突発的な情報は、コンシェルジュのスマートフォンに一斉メールで共有します。

――お客様の声はどのように共有しているのですか?

ホームページ、お電話、館内14カ所のご意見箱、直接カウンターに寄せられる意見を、すべてイントラネットで共有しています。意見の入力、電話やメールでのお客様対応、記録もすべてコンシェルジュが担当しています。専門の対応が必要なものは、専門スタッフから対応することもあります。

――幅広い業務内容ですね。どのように分担されているのですか?

コンシェルジュは1時間ごとに持ち場が変わります。例えば3階カウンター、テレフォンセンター、1階カウンター、1階ロビー、ご意見箱からの投書回収と入力、拾得物管理など、一日を通じて多彩な動きをします。

これは集中力が続くようにする工夫です。ロビーでの業務を最大連続3時間としとし、カウンター業務とロビー業務を組み合わせています。基本的には航空機の出発や到着に合わせて人員を配置し、移動のタイムロスを少なくしています。どこのポジションに誰がいるかをメンバーで共有していますので、臨機応変に交代や応援ができるのです。

――今後はどのようにしていきたいですか?

人材育成プランや組織制度、イントラネットによる情報共有の仕組みをしっかり構築しておかないと、いくら人というソフトが良くても機能しないと感じています。チームワーク向上にはハードとソフトの両面が大事です。仕組みをしっかり構築し、意識の高いコンシェルジュを上手く融合し、両輪となってサービスを提供することが、羽田空港の強みになると思います。

そのためにも働きやすい環境づくりと人材育成を充実させる方針です。特に韓国語や中国語、手話の対応要員の充実を図り、世界各国からお越しくださるお客様が「羽田はサービスが良いからまた利用したい」と思っていただけるようにしたいです。

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