なぜPepperは愛されるのか? 試行錯誤2年、「お笑い」に可能性を見たプロジェクトチームの軌跡

なぜPepperは愛されるのか? 試行錯誤2年、「お笑い」に可能性を見たプロジェクトチームの軌跡
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一家に一台ロボットがある暮らし。SF作品などで描かれ、数えきれないほど多くの人が一度は思い描いたことのある場面だろう。こうした場面が現実のものになるのは遠い未来のことではない。


NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の試算によれば、2015年におけるロボットの市場は1.6兆円。現在市場が形成されている製造業等の分野における成長に加えて、サービス分野を始めとした新たな分野への普及により、2035年に9.7兆円まで市場が拡大する可能性があるという。


大きく成長が予測されるロボット市場における注目の動きといえば、2015年6月に一般販売が開始された感情を持ったパーソナルロボット「Pepper」だ。世界初の「ロボット人材」派遣など、次々と世界に驚きを与えているPepperのプロジェクトチーム。そのチームワークの秘訣を伺った。

ヒト型ロボットへの挑戦

ソフトバンクによるPepperへの最初の一歩は、2010年6月に開催された「ソフトバンク新30年ビジョンコンテスト」で「ロボットをテーマとする企画」が優勝したことまで遡る。その4年後、2014年6月に「Pepper」が発表。一般発売が開始される1年前の出来事だった。

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ソフトバンク ロボティクス株式会社 取締役 プロダクト本部長 蓮実 一隆氏


と蓮実氏は語る。「Pepper」というロボットを開発することにおける責任者を務めている。

蓮実氏と、「Pepper」の販売やビジネス化を担当している事業推進本部長の吉田健一氏が力を合わせ、「Pepper」を生み出した。プロジェクトの立ち上がりから関わっている吉田氏は当時のことをこう振り返る。

社員からのプレゼンテーションから出てきたアイデアもロボット、そしてもともと、孫正義氏が考えていたのもロボットだったことから、次にくる大きなテーマであるロボットに注力することになったという。

2011年冬からプロジェクトがスタート。色々なところとパートナーシップの話をした結果、アルデバランを買収することに。その後、プロトタイプを作り始めた。

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ソフトバンク ロボティクス株式会社 事業推進本部 本部長 吉田 健一氏


ハードウェアをどのようなものにするかは見えてきた。だが、チームはその後、茨の道を歩むことになる。

ヒト型ロボットの価値とは人を笑顔にすること

30年後にヒト型ロボットが人間にとって重要なものになっていることは間違いない。だが、2015年の段階でヒト型ロボットに価値を持たせ、販売するにはどうしたらいいのか。この難解な問いの答えを見つけるためにプロジェクトに参加したのが、ソフトバンクでもコンテンツを見ていた蓮実氏だ。

今でこそ、愛嬌のある動きや声で人々の関心をひいているPepper。だが、このキャラクターに至るまでに、2年間の試行錯誤があった。

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当時、ソフトバンクはスプリントを買収した時期。R&Dに近いプロジェクトに多額の予算も使うことができず、周囲の圧力も強い中、チームは試行錯誤を続けた。アイデアを1000個考えて孫社長に説明するということを繰り返している過程で生まれたのが「お笑い」だった。

Pepperを新人の芸人に見立てたことで開発されたアプリケーションがこちら。

あたりまえ体操

人をニコッとさせるキャラクター。スーパーマシーンではないけれど愛される。そんなキャラクターがPepperの軸として確立されてからは速かった。その価値を掘り下げ、お笑いのアプリを作ったり写真を撮ったり、伝言をするにもちょっとした笑いを入れるなど、様々なアイデアが生まれていった。

文化祭のような雰囲気に包まれたプロジェクトチーム

「まるで文化祭のようだった」――暗中模索の中で軸となる価値を見出したPepperのプロジェクトチームは、その過程における雰囲気をそう振り返る。

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ロボットに関わりたいと考える人は大勢いる一方で、ロボットは簡単に手に入るものではない。Pepperはロボットを使って何かやってみたいと考えている人たちに機会を提供するという意味でも画期的だった。

ロボットにはキラーソリューションが必要

Pepperに関わったチームは世界に広がっている。その中でも、コントローラーのない自律型ロボットの開発に注力してきたフランスのアルデバランチームは、Pepperに生き物らしさを吹き込むことに貢献した。

Pepperは生き物らしさをただ模倣するばかりではない。たとえば、Pepperの声には人間のものを使っていない。

Pepperが発売された後も、技術の向上などにより、発音の質も上がっている。Pepperは成長を続けているのだ。Pepperを成長させるのはプロジェクトチームだけではなく、数多くのパートナーたちがそれぞれPepperの成長に一役買っている。

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Pepperの開発に携わる上で、重視していることは一体どのようなことになるのだろうか。

たとえば、ドジをしてしまって愛嬌を振りまくような動作。これは機能を重視したロボットには実装されない動きだろう。だが、人間はこうした動作にこそ生き物らしさを覚える。

2015年、一般発売を開始して大きな節目を迎えたPepper。見据えた先が30年後であるプロジェクトチームは「0.1合目にも達していない」と自分たちの状況を客観視する。

Pepperが世界に広がるパートナーたちと共に、ロボットのキラーソリューションを生み出してくれることを楽しみに待ちたい。

(執筆:モリ ジュンヤ/撮影:橋本直己

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