中毒女子急増中?――女心くすぐるフリマアプリを男性中心チームが生み出せた理由

中毒女子急増中?――女心くすぐるフリマアプリを男性中心チームが生み出せた理由
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女の子の心をとらえて離さず、中毒にさせる――。そんなスマホアプリが「Fril」です。女性が手軽に古着を売買できるサービスで、取り扱い商品数は200万点超。女性同士が積極的にユーズドファッションを売り買いしています。


アプリを開発したのは株式会社Fablic。事業開発会社 VOYAGE GROUPの卒業メンバーが集まって創業したこの会社は、驚くようなハードワークと粘り良さで、アプリ開発を成功に導きました。


「自分には事業開発しかできることはなかった」と謙遜するのは、代表の堀井翔太さん。その原動力は「絶対諦めない」強い思いにありました。成功するアプリ開発に見る、スタートアップのチームづくりの秘訣を聞きました。

200万点の商品を売り買い、女の子の心を離さないフリマアプリ「Fril」

2013年8月頭に、この恵比寿のオフィスに引っ越しました。最初は6人だったメンバーが20人に増えたので、半年足らずでこちらに引っ越しましたね。

Frilはスマートフォンでフリマができるアプリです。女の子しか使えないというコンセプトで、スマホのカメラで商品写真を撮るだけで簡単に出品できる。iPhoneとAndroidに対応していて、今では200万点を越える商品が出品されています。

Fril

創業メンバーは4人で、全員が事業開発会社「VOYAGE GROUP」の新卒でした。地方から東京に出て来たので友達もいなくて、休日は一緒に遊んだり、プライベートでWebサービスを作ったりしていました。2つサービスを作ったのですが、使われたものでもユーザー数は3000人くらいでしたね。

そんな時に、サンフランシスコに行って現地のスタートアップやコワーキングスペースを回る機会がありました。現地を回って「次に何かを開発する時は、ちゃんと会社を作って本格的にやろう」って話をみんなでしていました。

フリマアプリそのものを考えていたわけではありません。でも、海外ではCtoCのサービスがすごく流行っていて、面白そうだなと思っていました。僕はもともとガラケー事業の担当で、女の子がmixiのコミュニティやDECOLOGのブログで服を売っていることを知っていたので、ニーズはあるだろうと。ガラケーでは、商品を登録して、メールに画像を添付することで出品できる「モバオク」も流行っていましたし。

でも、スマホ時代のやり方は違うだろうし、カメラアプリくらい簡単に写真を撮って出品できたらいいなと思っていて。最初は誰でも利用できたり、母親向けの展開も考えていたのですが、色々検証して、結局女性に限定したフリマアプリにすることにしました。

「安く買えた」「ほかの人と競って落とせた」という満足感に近い感覚を得られることが、中毒的にハマる要素なのかなと。初めてFrilで出品した人もバンバン売れちゃうんです。ゲーム感覚でお小遣い稼ぎができる点も楽しいんですよね。

後は、その人が着ていた商品が、世の中にひとつしかない点ですかね。Frilで見つかるのはユーズド商品ですが、本当にいいものは5分で売れてしまう。また、商品をウォッチリストに加えた30人を退いて、一人だけ購入できた時の高揚感もあるんじゃないでしょうか。

スキルよりも「また飲みたい」と思えるか? チーム人材の見抜き方

全員で25人くらいのチームです。開発チームは全員男性、カスタマーサポートのチームは全員女性です。Fril全体では7割が女性ですね。サポートチームの彼女たちの半数以上はもともとFrilユーザーだったんですよ。ユーザーにメンバー募集を100〜200通くらい出して、30人くらいの立候補があり、採用したんです。

今は6名のエンジニアがいて、創業メンバーと前職の先輩が中心ですね。会社を辞めた先輩に、「サービスが急成長していてめっちゃ困ってる。頼むから助けてください」ってお願いして(笑)。前職で創業メンバー2人のエンジニアの先輩だった方にもお願いをして、今ではFrilのメンバーです。急成長するサービスを作る面白さを感じてジョインしてくれるのでありがたいです。

Frilのスタンドアップミーティング

はい、スタートアップでは多いチームの作り方だと思います。開発チームの採用には、スキルテスト以外に重視しているものがあります。「また次も飲みたい」と思える人かどうかです。

採用時に「ビアテスト」を設けて、面接後にお酒を飲みに行くんです。そこでその人をじっくり見る。どれだけスキルに長けていても、それに合格しないと採用はしません。まだまだ小さいベンチャーなので、「カルチャーに合うか」「コミットしてくれそうか」も見ますね。

ユーザーをきちんと見て、アプリを開発している」という点でしょうか。Frilを使ってくれてる人って普通の女の子なんです。その女の子たちのフリマに対する顕在化したニーズを見つけて、それをきちんと見ながら作った結果、多くの人に使われるサービスになっていったんです。リリース前も、100人くらいの女の子にヒヤリングしました。そんな哲学に共感して参加してくれるチームメンバーが多いと思います。

赤字社員でも頑張り続けた「絶対諦めない」意思を、チームに注ぐ

ハードワークなのは間違いないですね。Fablicっていう社名が「fabulous」と「holic」の中毒者を掛け合わせたもので。中毒的に使われる素晴らしいサービスを作るっていう意味と、後はちょっと皮肉で、仕事の中毒者っていう意味も込めています。「働くという選択肢しかない」っていう感じですね。

そうですね。創業メンバーがめっちゃ働くので、その背中を見てみんなも頑張ってくれていると思います。最初の頃はサービスの規模も小さいですが、ユーザーが増え、競合も出て来て、今が勝負です。

堀井翔太さん



なんでしょうね。これしかできるものがなかったんですかね。 今はFrilをすごく使ってくれる人がいて、やればやるほどサービスの成長につながる。この伸びを止めないことが大事かなと思います。どれだけ頑張って働いても伸びないと、やっぱり辛いですしね。

僕、自分にはすごい才能はないと思っていますけど、「結果を出すまで働けば結果が出る」って考えているんです。前職では入社から3年目くらいまでは「赤字社員」で、会社の利益に貢献できなかった窓際族でした。でも、希望してやらせてもらった事業を諦めずに続けていたら、大ヒットしたんです。事業責任者を任されて、そのまま子会社化されました。やり続ければ結果はでることをそこで学びました。

どうでしょうね。努力の精度は上がっていったと思いますが、もっと単純なことで、粘り強く諦めなかったんです。1日100件のテレアポをほかの誰よりもやるとか、この子にインタビューしたいと思ったら、あらゆる手段を使って連絡するとか。「できないこと」が我慢できないし、「できないまま」だと後悔するし。諦めが悪い方なんだと思います。

「ハスラー、ハッカー、デザイナーをそろえろ!」

今のチームはメンバーの得意部分が明確です。創業メンバーの4人のうち、僕は前職でも代表をやっていて、メディア運営や広告、ガラケー女性向けメディアに詳しかったので、ユーザー獲得や運営をやります。デザイナーは美大卒でVOYAGEから現場叩き上げのメンバー。2人のエンジニアは、それぞれiOS/Androidアプリのデベロッパーとインフラエンジニアです。

この4人がいれば、会社もサービスも作れてしまう。全員得意な領域に特化していて、最終的に決める人が一人いる。議論はしますが、お互いを信じて任せるというやり方ですね。

そうですね。Open Network Labの前田紘典さんが、「ハスラー、ハッカー、デザイナーをそろえろ」っておっしゃっているんですけど、僕らは最初からその要素がそろっていました。スタートアップやサービスの立ち上げ期では、すごくいいメンバー構成だと思います。

アプリの改善サイクルは3週間、今だからできるハードワークで勝ちたい

株式会社Fablic 堀井翔太さん

昔は座談会やユーザーインタビューを月に1回やっていました。今はヘビーユーザーの女性メンバーが多くいるので、作ったものを見せて意見を聞き、その場で改善案を考えるといった進め方になっています。

「イテレーション」と呼ぶアプリの改善サイクルを、3週間で回しています。2週間で開発して、1週間でテストとデプロイ(実装)を完了し、3週間ごとにApp StoreとGoogle Playにアップデートしていますね。3週間ごとに数字を見て開発タスクの優先順位を決め、それを消化していくっていう流れですね。

アプリはApp Storeの審査があるため、Webサービスのように改善をすぐに反映できません。その中で競争に勝っていくには、改善のサイクルをいかに早く回すかが重要です。普通の会社が週5日働くところを、僕達が週7日働けば、年間でイテレーションを10回多く回せる。つまり10回多く改善できるので、その分サービスが良くなる。

さすがに今は土日も含めて開発を進めるのは創業メンバーが中心ですが、サービス開始から1年ちょっと経ってもメンバーが増えたので、改善スピードは日に日に早くなっていますね。

デザイナーが開発のディレクションも兼任をしてくれており、イテレーションの管理をしています。機能要望は毎日数十件届くのですが、言われた機能をそのまま実装しないように気をつけています。使いこなしてくれてる人で声の大きい人の意見を素直に聞いてしまうと、アプリを新しく使い始めてくれた人やリテラシーの低い人が迷ってしまうので、そのバランスを保つ必要があって。

後はサービスのKPIがあるので、その指標達成に効果の高い開発タスクを、工数を見ながらイテレーションに加えています。最近は自分がコメントした商品を見返すことができる機能を追加したんですが、すごく使われています。

定例会議はいらない、1日5分の「立ち雑談」で決定し、すぐに動く

基本はそうですね。エンジニアだけは1日5分の「スタンドアップミーティング」で開発の進捗を共有しています。多少ブレストをすることはあっても、定例ミーティングみたいなものはひとつもないですね。

開発では「Pivotal Tracker」を使っています。サンフランシスコのスタートアップでよく使われている、リーン開発に最適化したツールで、課題を共有するチケットシステムみたいなものですね。

登録する内容はブレストで決めることもありますが、チームメンバーとの軽いコミュニケーションはほとんど口頭です。「こんな面白いサービスがあるよ」といった参考情報は、Skypeのグループチャットで共有しています。後は社内メンバーだけで共有するEvernoteもありますね。

Fablicの根本にあるのは、「誰かが本当に必要とするサービスを作ること」です。斬新なコンセプトや流行に乗っかることよりも、ちゃんとユーザーを見て、その人たちが中毒的に使ってくれるサービスを目指しています。

流行もののサービスは、ITリテラシーの高い方の間で一時的に盛り上がることはあっても継続的に使われない。だからFrilは、今後もちゃんとユーザーを見て作っていきます。

堀井翔太さん

(取材・執筆:三橋ゆか里 /撮影:橋本直己/企画編集:藤村能光)

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