「リーダーがやるべきことは断言」「細かなプロセスに首を突っ込まない」――宣伝会議 編集長のチームリード力

「リーダーがやるべきことは断言」「細かなプロセスに首を突っ込まない」――宣伝会議 編集長のチームリード力
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「私自身が日々悩んでますし、まだまだリーダーの勉強中なんですよね」

はにかみながらこう答えてくれたのは、株式会社宣伝会議の谷口優さん。20代から編集長を務め、雑誌やWeb、書籍企画を担当しながら、編集部というチームを引っ張るリーダーです。

若手ビジネスパーソンがリーダーになった時、チームで仕事をすることに対して高い壁が立ちはだかります。その時どう考え、壁を乗り越えたのか――。ベストチーム・オブ・ザ・イヤーでは、チームで奮闘するリーダーの横顔を、特集「若手リーダーが壁を超えた時」で追いかけます。

「仕事の細かなプロセスには首を突っ込まない。心配性だけど」


チームが前に進む時に大切なのは「ゴールは指し示すけど、プロセスを言い当てない」って姿勢だと思うんです。自分自身が心配性というか、結構細かいタイプなので、ついつい過去の自分の成功体験を基に、細かくプロセスの指示をしてしまいがちなんですけど。最近は、なるべくぐっとこらえるようにしています。

私達が日々触れている広告の世界って、チームで仕事をすることが前提にあるんですね。コピーライター、アートディレクター、カメラマンといった才能を集めて、取りまとめて、それらを1つの方向性に導くリーダーがいて。

特に広告制作の場合には、細かいプロセスまで「こうしてほしい」と言及してしまうと、メンバー自身のクリエイティビティや専門性が発揮できなくなり、最終的な表現の質に悪影響を与えてしまうことがあります。

これを教訓にして、極力、描いたゴールを共有することに努めています。まだ完璧にそれができているわけではないのですが(笑)。

谷口優さん。雑誌『宣伝会議』の編集長を務め、Webメディア「AdverTimes」や雑誌のデジタル化といった新規事業、書籍企画など、編集部門全体を統括するメディアプロデューサー。「最新の情報は人の頭の中にある」を信念に、編集長になった今も取材活動は欠かさない。「人にあわないと不安なんです」という一面も

いえ、そんなことはなくて。編集長という立場になった当時、編集部員の多くは20代で、同年代だったんです。後輩の存在が仕事の脅威に感じたりして(笑)、今もまだまだですけど人を育てるような余裕なんて、まったくなかったです。しかも子供の頃から協調性がないというか、団体行動が苦手というか...。そもそも、チームで動くことに適性のある性格ではないことも、自覚していて。

でもメンバーを育てて、チームを率いるには、「包容力」とか「人間力」が大切。今になってそう実感するんですけど、当時は全然考えられなくて。まずは企画をたくさん作るとか、制作プロセスを効率化するといった「機能としての編集長」の役割を果たすことでいっぱいいっぱいでした。

ずっと同じチームだった20代の部下が育って、編集長になったんですね。それが心の底から嬉しかったんです。

ずっと「企画をどう作るか、どうプロセスを効率していくか」という機能視点で仕事をしていた自分が、「単に雑誌を作れば終わり」ではなく、「チームの中で人が育つ瞬間」を見て、本当に素晴らしいことだなって思って。

理想は、仕事を通じてメンバー個人個人が役割を見出し、成長してくれることなんです。だからこそ、細かい指示は極力せずに、メンバーそれぞれが考えてくれる形に持っていければと考えています。

「断言する。迷いを見せるとチームは止まるから」

チームの情報共有に対しては、「今の時代、情報って加速度的に鮮度が落ちて価値も落ちていくので、情報を抱え込むことで自分のポジションを作るみたいなことはできないと思うんです。もっとオープンマインドに情報を共有していけばいいと思います」(谷口さん)

断言すること」でしょうか。編集の仕事は特にそうなのかもしれませんが、明確な正解がないものが多いんです。A、B、Cの3つの案がある場合、どの案が正解かって、誰も分からない。でも部下が迷っていたら「B案で行こう!」と断言する。理由を聞かれたら、その時にそれを論理的に答えるようにして、迷いは見せないようにしています。

編集の仕事は編集部員だけでなくて、その先にいるクリエイターのみなさんと一緒に作っていく仕事なんですね。そこで私の判断が半日遅れると、その先にいる人達の仕事も遅れて、後手に回ってしまう。雑誌は常に締め切りがある仕事ですし、締め切りまでの期日が短くなればなるほど、企画を実現するための選択肢がどんどん減ってしまう。なので、とにかく早く迷わず決めるようにしています。

この断言するという行為は、あくまで「編集長としての機能」なのかもしれませんが、迷いを見せないことがチームを前に進め、いい仕事につながってくると思います。まだまだ勉強中で、私自身も悩んでいるんですけどね(笑)

最近思うのは、リーダーもチームメンバーの一員だという意識を強く持つことかな、と。リーダーとメンバーに別け隔てはなく、全員がチームを有機的に機能させる一員なんですね。だから、肩書きにとらわれずに、それぞれのメンバーがチームを引っ張るという当事者意識を持って、役割を明確にしていくといいかなと思います。

日本は「和をもって尊しとなす」という心の文化があり、調和を保とうとする考え方があると思います。一方で、悪い言い方をすると、「出る杭は打たれる」。多くの人から共感されたTVドラマ『半沢直樹』も、その象徴だったかもしれません。

「和をもって尊しとなす」が通用したのは、「今日より明日がよくなる」という世界が前提にあるからこそなのかもしれません。でも今って、明日がより良くなる保障はないですよね。だからこそ、「和」や「絆」とは異なるチームワークを発揮して、チームを作っていく必要があるのかなと思います。

日本に、本物のチームワークを」――。第51回宣伝会議賞のベストチーム・オブ・ザ・イヤーさんの課題を見た時は、素直に納得感がありましたね。

「みんな仲良し」で仕事をしていても、そのチームは衰退していく。これは体感的に分かるんですよね。だから、常に個人のスキルアップが必要というか、自らがチームの中で範を示して、個人個人でリーダーシップを取っていかないと、と思いますね。

「さらけ出したくない過去の原体験が、人を動かす」

学生時代にコピーライティングの勉強をしていた谷口さん。「過去をさらけ出したコピーが、人に共感される」と気づいた

過去の経験や思ったことを、さらけ出す」という姿勢ですね。コピーは自分の経験や過去の蓄積からしか生まれないと思います。一人の“超原体験”のようなものが根っこにないコピーだと、やっぱりほかの人は共感してくれないんです。

そうですね、自分とチームのかかわりを改めて考えてみると良いかと思います。チームで仕事をしていて「うれしかった」「困った」「リーダーシップを発揮できた」――その人それぞれの原体験をもとに作ったコピーが、人を動かすと思うんです。

私が最初にお話した「チーム」に対する考え方って、超批評家的ですよね。その視点からは人を動かせるコピーは生まれないと思うので、そこは反面教師にしていただけたらと(笑)。

はい。一方で、自分の経験だけにこだわらず、「疑似体験」も考える下地になるんですよ。リーダーシップを発揮してチームを引っ張ったことがない人でも、サッカー日本代表の試合を見て、「ここに本物のチームワークがある」と感じれば、その感情を出発点にしてもいい。考えるための題材って、実は自分の周りにたくさんあるんですよね。

谷口優さん
(取材・執筆:藤村能光/撮影:橋本直己

ベストチーム・オブ・ザ・イヤーからのお知らせ

ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、「第51回宣伝会議賞」に協賛し、キャッチコピーの募集をしています。応募課題は「新しいチームワークの価値を伝える」キャッチフレーズです。こちらのページで詳細をご案内しております。

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