ギスギスした関係の原因は「想像力の不足」――「伝え方」を鍛えて円満になるコツ

ギスギスした関係の原因は「想像力の不足」――「伝え方」を鍛えて円満になるコツ
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例えば、仕事を依頼することが下手な上司に部下はどう対処すればいいのか。もっとお互いに良い気持ちで、良い仕事をするにはどうすればいいのか。結局のところ、仕事とは人間関係を形成する「伝え方」によって左右される。

上司と部下、同僚同士、男と女……、様々なバリエーションがある中で、円滑なチーム運営、チームコミュニケーションをするための具体的なコミュニケーションのコツとは何か。今回、58万部のベストセラーとなっているビジネス書『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一さんに話を聞きにいった。

プロフィール

佐々木圭一 コピーライター、作詞家、上智大学非常勤講師

上智大学大学院を卒業後、97年博報堂に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。アジア初、6ヵ国歌姫プロジェクト(アジエンス)。カンヌ国際クリエイティブアワードで計5つのライオンを獲得、さらにAdFestでゴールド賞を2つ獲得するなど、入賞受賞合計51のアワードを獲得。 郷ひろみ・Chemistryの作詞家として アルバム・オリコン1位を2度獲得。

上司の子供の名前を知っていますか?

実は上司にも「認められたい欲」があります。上司だって本当は信頼されているのか不安で仕方がないのです。だから、部下が上司を信頼すれば、上司は部下のことを認めやすくなるのです。

この「認められたい欲」を使うと上司と部下の関係は非常によくなります。例えば、話を聞いてくれない上司に対しては、「もっと話を聞いてください」とストレートに言うのではなく、「○○さんの仕事になるべく早く近づきたいんです。お時間を取って教えていただけませんか」と言えば、上司は前向きに考えるようになるのです。

それは、お互いが相手のことを想像していないからです。部下は上司が自分に何を求めているのかを想像していないし、何が好きなのかも知らない。

例えば、みなさんは上司の子供の名前を知っているでしょうか。もし、部下としてそこまで知っていれば、上司と部下の関係はとてもいいはずです。それは上司とプライベートな話をするまでの関係性があり、上司が何を考えているのか想像したことがある証左でもあるのです。

失敗から生まれた「伝え方が9割」

私が会社員のとき、現場の仕事をしながら同時にリーダーとしての役割を果たしたことがあったのですが、自分では的確なディレクションをしたつもりが、部下からすると、押し付けられているように感じられるお願いの仕方をしていたのです。

しかも部下がアイデアを出しても、自分の考える範疇のものは採用するけれど、そうでないものは、完全にシャットアウトしていました。そうすると、部下は保守的なアイデアしか出さなくなったのです。必然的に仕事は面白いものではなくなりました。

現場の仕事はすべて現場に任せ、リーダーとしての仕事だけを担ったとき、自分の中に大きな変化があったのです。それは、俯瞰で仕事を見られるようになったことと、自分とは異なる方向性のアイデアであっても、面白いものは採用するようにしたことでした。それによって、チームのアウトプットとして得られるものが、非常に大きくなったのです。

そうです。なるべく現場から上がってくるごつごつしたアイデアでも、エッジを残しつつ、自分のディレクションの方向に持っていく。かたちとしてチームの丸をつくるために、相手を削って丸にするのではなく、相手のごつごつした主張をも包括したうえで、丸にしてみたのです。

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だからこそ、私は仕事をするときに、部下には「君は何をやりたいのか」「将来どうなりたいのか」「短期、長期の目標」といったことを必ず聞くようにしています。それをなるべく叶えるかたちで、仕事をつくります。

ひらめきではない「方法論」での強い言葉のつくり方

私はコピーライターですが、もともとひらめきタイプでもないし、いいアイデアをすぐに思い付いたこともない。コピーライターと言えば、世の中ではひらめきの人だと思われているかもしれませんが、自分はできない。だからこそ、方法を考えたのです。

コピーの話で言えば、例えば、強い言葉をつくるとき、正反対の言葉を手前に入れるといいのです。「あなたが好き」と言うときも、「嫌いになりたいのに、あなたが好き」と言えば、強い言葉になる。この方法を知らなければ、こうしたコピーは出てこない。

私はもともと理系で、どんな技術でも誰もが使えるようにすることが好きなタイプです。伝え方だって、誰もが使えるような技術にすれば、もっとコミュニケーションは広がると思ったのです。

伝え方はセンスではない。 まずメールで練習してみよう

もちろん褒められることは誰でもうれしいものですが、どう褒めるかという技術があります。それは、自分が褒めたいところを褒めるのではなく、相手が褒めてほしいところを褒めることです。これができると、より関係性は良くなります。

この人はどこを褒めれば、うれしくなるのか。そのポイントを押さえるには、相手のことをどれだけ想像できるかにかかっています。前述の上司と部下の関係と同じことです。私の本のタイトルは『伝え方が9割』ですが、隠れコンセプトは『相手を想像する技術』です。すべては相手を想像することにかかっているのです。

伝え方はセンスではありません。センスだと思っていたら、永遠に良くならない。伝え方は技術だからこそ、誰でも学べるんです。

だからこそ、学びながら、使うことが重要です。では、どういうところで鍛えればいいのか。私がお薦めしたいのは、メールです。テキストは一旦考えて送ることができます。それを何回も繰り返していけば、うまい伝え方は自然に身につくものです。そうすれば、会話の中でも自然に使えるようになる。メールなら、上司に対して歯の浮くような言葉も書けるでしょ(笑)。一回考えて技術を活かしてみる。そうした習慣をつくることが大事なのです。

 
後編(9月9日公開予定)に続きます。

(取材・執筆:國貞文隆/撮影:橋本直己/企画編集:椋田亜砂美)

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